2025年9月13日(土)・14日(日)に開催される「ULTRA JAPAN 2025」。並いる大物DJが揃ったラインナップの中でも最も大きな話題を集めているのが、Calvin Harrisの初出演だ。2010年代のEDMムーブメントをけん引し、数々の世界的アンセムを生み出してきた彼の輝かしいキャリアと現在の進化、そして注目のDJスタイルに改めて迫る。
■「EDMとポップスの"架け橋"」Calvin Harrisとは?
Calvin Harris最大の功績は、「EDM (エレクトロニック・ダンス・ミュージック)」をポップスのど真ん中に引き上げたことだ。スコットランド出身の彼は、2007年のアルバム『I Created Disco』でデビュー。自ら作詞・作曲・ボーカル・プロデュースを手がけ、エレクトロ・ディスコを基調にしたポップサウンドで注目を集めた。そして2009年の「I’m Not Alone」が大きな転機となる。トランシーなシンセ・フックが印象的なこの曲はヨーロッパ中でヒットし、その後のEDMの萌芽ともいえるサウンドに影響を与えた。この楽曲と酷似していたChris Brownの「Yeah 3x」にも後に彼のクレジットが追加されるなど、シーンへの影響力は計り知れない。「I'm Not Alone」収録の2ndアルバム『Ready For The Weekend』は自身のヴォーカルに加え、よりダンス・ミュージックにシフトしたスタイルで、さらなるブレイクを果たす。2012年には3rdアルバム『18 Months』をリリースし、Rihannaとの「We Found Love」やNe-Yoとの「Let’s Go」など、欧州のダンス・ミュージックとアメリカのポップ・シーンを融合させたサウンドで世界中のチャートとラジオを席巻。AviciiやDavid Guettaと並び、「DJ/プロデューサー=裏方」という概念を壊し、プロデューサーが表舞台に立つ流れを作った。この頃にはヴォーカリストを迎えたプロデューサー・スタイルも推進し、2014年の4thアルバム『Motion』でさらにEDMスターとして飛躍。YouTube総再生回数145億回以上、全世界トータル・アルバム・セールス1200万枚、トータル・シングル・セールス4200万枚といった実績に加え、米『Forbes』誌が発表する「世界で最も稼ぐDJ」ランキングでは2013〜2018年の6年間にわたり1位を独占。数字だけでなく、彼のダンスとポップスの境界線を解体&再定義してきた音楽がいかに世界中で広く愛されてきたかを証明している。
Calvin Harrisの音楽の真骨頂は、「ジャンルを超えていく柔軟性と革新性」だ。デビュー時のエレクトロポップ・ディスコからEDM時代を支えた王道ダンス・ポップと、その時代ごとの“空気”を巧みに読み取り、常に一歩先をいくプロダクションでアップデートを続けている。そして彼の音楽の最大の魅力は「覚えやすく、歌いたくなるようなキャッチーなメロディ、感情を高揚させる」そのセンスに尽きるだろう。また特筆すべきはそのキャリアに甘んじる事なく進化を恐れない姿勢だ。特に2017年の5アルバム『Funk Wav Bounces Vol. 1』では、PharrellやAriana Grande、Frank Ocean、Snoop Doggなど第一線で活躍するビッグ・アーティストを迎え、ルーツであるファンクやディスコ、ソウルの要素をふんだんに取り入れたチルでメロウ、上質で洗練されたグルーヴに昇華し、「EDMヒットメイカー」という肩書きに甘んじることなく、ダンスミュージックに留まらない才能と音楽愛というアーティストとしての幅広さと進化を世界に示した。また、この時期から激しいEDMの競争から一旦距離を置き、自身のルーツであるハウスにも回帰。Rihannaが歌い、当時交際していたTaylor Swiftが変名で作詞参加した「This Is What You Came For」や、「How Deep Is Your Love」は、EDMの喧騒とはかけ離れた作風にも関わらず、ダンスミュージックにおける美しい引き算の美学を提示し。大衆性とアンダーグラウンド感の絶妙なバランスを体現しヒットを記録。さらに、コロナ禍以降は“Love Regenerator”名義でアシッド・ハウスやレイヴ・サウンドにもアプローチ。90年代レイヴ文化へのリスペクトと現代性が共鳴し、当時リバイバルが起きていたテクノやレイヴの再評価とリンクする形で彼の音楽が再び評価を集めた。そして現在は自身が歩んで来た要素を巧みに融合し、UKトランスへの敬愛を現代的に再構築した2023年「Miracle with Ellie Goulding」が大ヒット。どの時代においても彼の音楽は、ダンスを超えて「感情に届くエモーショナルなサウンド」として進化し続けている。
■名曲と革新が交差するDJスタイル
そして最も気になるのは、今のCalvin HarrisがULTRA JAPAN 2025でどんなDJセットを披露するのか、ということだ。ダンスミュージックの聖地IBIZAや世界的エンターテイメント都市として知られるラスベガスでのレジデントDJ、そして世界中の大型フェスティバルでのヘッドライナーの常連として知られる彼のDJの強みは、何といっても圧倒的な“名曲の数”。会場全体を巻き込むシンガロング、そして「誰もがどこかで聴いたことがある」メロディの数々はフェスにおける圧倒的な武器だ。だが過去のヒットに酔いしれるだけに留まらない。ここ数年で進化させて来た自身の音楽スタイルと共に現行ダンスシーンのトレンドであるテクノやレイヴの価値観を巧みに取り入れ、往年のEDM名曲を現代的にアップデート。特に彼のDJの再評価の決定打となったのが昨年、11年ぶりに出演となったマイアミでの「ULTRA MUSIC FESTIVAL」と「Coachella」 でのステージだ。懐かしさ溢れるEDMヒットに、身体に体感する硬質なドラムキック、高揚感をあおるレイヴィーなシンセやベースなど、現代的なテクノやレイヴの要素を加えアップデート。その完璧なまでのシームレスなブレンドは過去と現在をつなぎ、懐かしさと新鮮さを同時に感じさせ、耳だけでなく心まで踊らせるDJとしてSNSでもトレンド入りを果たした。唯一無二のヒットメイカーだからこそ成し得るエモーショナルで洗練された世界観と、花火やレーザーなどの一体感溢れる巨大な演出が、お台場の野外をどう染め上げるのかをリアルに体感できるのが楽しみだ。
■ ULTRA JAPAN 2025で体感したいCalvin Harrisの5曲
数多くのヒット曲を持つCalvin Harrisの膨大なディスコグラフィの中から、彼の進化とスタイルを象徴する珠玉の5曲をピックアップ。1. We Found Love feat. Rihanna (2011年)世界中のチャートを制覇した不朽の名作。リリースから10年以上経った今も、イントロが流れた瞬間にフロアの空気を変える魔法の1曲。2. Miracle (with Ellie Goulding) (2023年)2020年を経て更なる進化を遂げたCalvinのUKトランス愛に満ちた、彼の“今”を象徴するアンセム。エモーショナルなシンセとEllieのボーカルが鮮やかに響く。3. Summer (2014年)Calvin Harris=夏のイメージを決定づけたキラーチューン。高揚感と哀愁が同居するメロディ、そして人懐っこさも感じさせる本人の歌声が大衆のシンガロングを誘う。お台場のULTRAの夜空で聞くのにふさわしい1曲だ。4. Under Control (with Alesso) (2014年)彼のEDM側面を代表する1曲。昨年のULTRA JAPANの大トリを飾ったAlessoから、今年10周年を迎える記念すべき年にCalvinが初参戦するという、偶然とは思えないラインナップのドラマ性を感じさせてくれる。5. Blessings with Clementine Douglas現時点での最新作にして、今年の夏を彩るトランス×ハウスの原点回帰的な意欲作。過去と現在をつなぐセットリストの中でどんな位置に織り交ぜてくれるか楽しみだ。単なるヒットメーカーではない。ジャンルも時代も凌駕した音と感情で世界の耳と心をつかんで離さないスーパースターが、初出演となる ULTRA JAPAN 2025でどんなDJを見せてくれるのか今から待ちきれない。
現在『ULTRA JAPAN』では、オフィシャル先着先行チケットの第1弾が発売中。『ULTRA JAPAN 2025』の公式サイトや各チケットベンダーを通じて購入可能となっている。 また、2024年に新設され話題となった23歳未満限定の『U-23チケット』も引き続き販売されており、若年層にとってさらに手に取りやすい価格設定となっているのも注目ポイント。2014年から始まり、記念すべき10周年を迎える『ULTRA JAPAN 2025』――その熱狂の瞬間を見逃さないためにも、チケットは早めにチェックしておきたい。 以下より詳細をチェック。