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■ラファイエット総研ディスカッション･ペーパー

『動画ダウンロードの法的諸問題』

●ラファイエット総研が調べたところでは､従来から日本と欧州の一部の国のYouTube動画ファイルはダウンロードに何らかの制限が試みられている一方､それ以外の多くの国のYouTube動画ファイルでは高音質･高画質バージョンがダウンロード可能となっている(勿論､自発的に高音質･高画質バージョンを一般公開している寛大な日欧アーティストも少なくない)｡

●ところでYouTube動画ファイルのダウンロードを指して､しばしば『違法ダウンロード』というワーディングが用いられるが､これは必ずしも正確ではない｡

●著作権者がYouTubeなどの媒体に著作物をアップロードし一般公開した時点で､視聴者が(『利用』ではなく､)『私的使用』目的に限定してダウンロードすることは著作権法の許容範囲に含まれるようになるからだ｡

●従って利用規約に基づき『閲覧』と看做すストリーミング再生のみを許諾するYouTubeなどの動画共有サイトが､動画ファイルのダウンロードをルール違反として扱い､これを『違法ダウンロード』と称しているに過ぎない｡つまり正確には利用規約違反である｡

●尚､厳密にはストリーミング再生であっても動画ファイルが端末に一時保存(ダウンロード)される訳で､利用規約違反の線引きは実に曖昧である｡

●ところで､全体で数千万曲(本)に及び他の追随を許さないYouTubeの動画ファイルのラインナップこそYouTubeの魅力であり強味である｡

■ラファイエット総研ディスカッション･ペーパー

『動画ダウンロードの法的諸問題』


●YouTubeにアップロードすれば世界中の人々の目に触れることが可能となり宣伝効果が絶大である一方､どんなに優れた楽曲や動画ファイルであってもYouTubeにアップされていなければ､その存在すら認知されないと言っても過言ではない状況がYouTube最大の売りになっている｡

●だから世界中のミュージシャン､アーティスト等が挙ってYouTubeを宣伝に利用する｡利用せざるを得ない｡

●他方で無償閲覧が可能なYouTubeから著作物をダウンロードされてしまうと､アーティスト達は楽曲配信サイトからの有償ダウンロードによって収益を得る機会を逸することになる｡

●そこでミュージシャン達はYouTubeなどの動画共有サイトに対して圧力をかけ利用規約でストリーミング再生(=閲覧)のみを許諾し､また動画ダウンロード･アプリ(APK)を非公式化すなわち野良アプリ化してAndroidスマホのホーム画面への表示を拒否するよう働きかけているようだ｡

●しかし､動画共有サイトがストリーミング再生しか許諾しない状況は､他方で視聴者やデータ通信会社に対し非常に大きなストレスを与えることになる｡

●すなわち有限のデータ通信量を購入している視聴者にとって同じ楽曲を繰り返しストリーミング再生させられることは､時間帯によって通信速度低下の原因ともなり極めて不快である｡

●またデータ通信会社にとっては､データ通信量無制限のカスタマーに対し快適な通信速度を提供し続けるための余計な設備投資負担が重くのし掛かるという大問題が生じる｡

●不快なストリーミング再生を強要される視聴者やデータ通信会社にソッポを向かれてはYouTubeの広告収入に打撃となるため､結局､動画共有サイトは非公式APK(動画ダウンロード･アプリ)の使用を黙認せざるを得なくなっている｡

■ラファイエット総研ディスカッション･ペーパー

『動画ダウンロードの法的諸問題』

●昨今の状況は関知しないが､嘗てはデータ通信会社がデータ通信量無制限の契約者に対し､Real Playerのような動画ダウンロード･ソフトの使用とオフラインでのYouTube動画ファイル鑑賞を半ば公然と勧めていた｡

●動画共有サイトの利用規約に従って馬鹿正直にストリーミング再生を繰り返されたら､データ通信会社の経営が圧迫されてしまうのだから､これも致し方ないのだろう｡

●もっともデータ通信会社の多くが月間データ通信量の量り売り料金プランを発表するようになった6~7年前から､通信会社がReal Playerのような動画ダウンロード･アプリの使用を勧めなくなった｡だがこれはストリーミング再生のストレスをデータ通信会社が視聴者に皺寄せしただけのことであり､状況は殆ど変わっていないと言える｡

●視聴者やデータ通信会社の不満に向き合わざるを得ないため動画共有サイトが非公式APKを事実上､黙認しているので､日本のミュージシャンやアーティストの中には､YouTubeにアップする動画を音質や画質の悪いライブ･コンサート映像に限定したり､フル･コーラスではなく短い試聴版に留めているケースが散見される｡

●そのような日本の一部ミュージシャンの自衛措置に対して内外から余り不満が寄せられないのは､彼等の楽曲や動画に対する国際社会の評価や関心の低さの証しなのだろうか｡

●もし､そうだとすれば日本の一部ミュージシャンは余り実益のない予防措置を講じている､つまり過剰防衛に陥っているということになるかもしれない｡

●以上がYouTube動画ファイルのダウンロードを巡る現実であるが､YouTubeダウンロードに関するミュージシャンや動画共有サイトのスタンスに大きな問題点が見受けられるので指摘しておこう｡

■ラファイエット総研ディスカッション･ペーパー

『動画ダウンロードの法的諸問題』


●YouTubeに高音質･高画質の動画ファイルをアップしている寛大なアーティストがいる一方で､日本の一部ミュージシャンは音質や画質の悪いライブ･コンサート映像に限定したり､フル･コーラスではなく試聴版に留めている｡

●勿論､著作権や著作人格権を自衛するのはミュージシャンの正当な権利であり､全く非難されるべき行為ではない｡

●しかし､高音質･高画質のテレビ歌謡番組を視聴者がDVDレコーダーで録画(ダウンロード)し私的に使用する行為には全く目くじらを立てないミュージシャンが､YouTubeにアップした動画ファイルをダウンロードする視聴者に対してだけ刺々しい態度を取ることには困惑の念を禁じ得ない｡

●『TV番組の録画(DVDダウンロード)には寛大なスタンスで臨む一方､YouTubeダウンロードを敵視し厳しく排除』という偏った日本の一部ミュージシャンの振る舞いは説得力に欠け､米国企業Googleの運営するYouTubeだけを狙い撃ちした権利の濫用と取られても反論の余地がない｡公序良俗違反の恐れがあり早急に改善すべきではないか｡

●動画共有サイトのスタンスについても問題点を指摘可能だ｡

●Googleの運営するYouTubeはTV番組の録画(DVDダウンロード)が当たり前となった今日もなお､利用規約によって動画ファイルのダウンロードを禁じ､ストリーミング再生のみを許諾するという時代錯誤から抜け出していない｡YouTubeは動画ダウンロード･アプリ(APK)を非公式化すなわち野良アプリ化してAndroidスマホのホーム画面への表示を拒否している｡

●この結果､視聴者はストリーミング再生の集中による通信速度の不安定化､片やデータ通信会社は余計な設備投資費用を負わされている｡

■ラファイエット総研ディスカッション･ペーパー

『動画ダウンロードの法的諸問題』


●Googleのスタンスが明らかに問題なのは､このように厳格で硬直的な利用規約が主に音楽関係の著作物に対してのみ適用されていることだ｡

●ニュース記事であるとか政治経済評論のような音楽以外の著作物についてGoogleはスクリーンショットで撮影する技術を公式に無償で提供し､撮影したスクリーンショットからテキストのみを抽出して保存したりコピペする技術も公式に無償で提供している｡

●しかし著作権法は音楽関係著作物のみならず音楽以外の著作物も全く同様に保護している｡

●また音楽関係著作物の殆どが娯楽作品であるのに対してニュース記事であるとか政治経済評論のような音楽以外の著作物の方は人々の生命､財産､そして雇用やコミュニティーといった人間関係を支える重要な知的基盤であることが少なくない｡

●音楽関係著作物(コンテンツ)と音楽以外の著作物(コンテンツ)を厳しく峻別するGoogleのスタンスは明らかに異常であり､人々の生命､財産､そして雇用やコミュニティーといった人間関係のみならず西側諸国のバックボーンである法の支配を支える音楽以外の著作物の方だけ只乗りを放置､寧ろ只乗りを技術的に支援するような振る舞いを続けているのは極めて不適切であって､西側諸国を代表する情報メディアとしての自覚と責任感を欠いているとしか言いようがない｡

●主に音楽関係著作物についてのみストリーミング再生義務を課し閲覧行為だけを容認､ダウンロードを厳しく排除するYouTubeの利用規約は明らかに公序良俗に反していると言えよう｡

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