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チーム支えた左腕の頭脳 1995年星稜の軌跡
8強入りをかけた3回戦の関西(岡山)戦から、さかのぼること約8カ月。
前年の年末から年始にかけ、星稜のエース左腕・山本省吾は高校の全日本選抜18人に選ばれ、オーストラリアに遠征した。チームを率いたのは渡辺元智監督(当時・横浜監督)と、阪口慶三コーチ(同・東邦監督)だった。
監督の山下智茂は出発前、山本に5万円の餞別(せんべつ)を渡すと、「代わりに渡辺さんと阪口さんのミーティングを全部メモしてきてくれ」と伝えた。全日本の経験をチームに還元してほしいとの願いもあった。2週間後、帰国した山本は膨大なリポートを持ち帰った。
ページをめくり、山下は目を見張った。ミーティング内容はもちろん、自分以外のメンバー17人全員の性格や技術的な特徴まで綿密に記されていた。その中には、遠征中に同部屋で過ごした関西のエース左腕・吉年滝徳の分析もあった。
中略
試合2日前の選手だけのミーティングで、吉年の特徴を伝えた。立ち上がりの悪さや高めの直球、低めのカーブの見極めを確認し、「『熱くなりやすい』『足で崩すと力む』という山本の話は参考になった」(主将の庄田大輔)。試合になれば、二回表の三盗で自ら吉年攻略の突破口となり、4―2の勝利に導いた。