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“鳥になった研究者”鈴木さんと“ゴリラになった研究者”山極さんは共に、動物たちの住む環境に飛び込んで生態を調べ続けてきた研究者だ。長年の研究成果が貴重であるのは、想像にたやすい。
例えば、鈴木さんが研究するシジュウカラは天敵を見つけると「警戒の鳴き声」を発する。しかし、天敵の種類に応じて鳴き声を使い分けているという。
ヘビの場合は「ジャージャー」、タカなら「ヒヒヒ」と鳴くが、鈴木さんいわく、これは「天敵によって対処法が違う」ため。「タカが来たら隠れればいいけど、(ヘビの)アオダイショウが木を登ってきているのにじっとしていたら食べられてしまう」と、きちんと理解しているそうだ。
さらに興味深いのは、シジュウカラの「言葉」にも「文法」があるという研究結果である。天敵と会ったとき、シジュウカラは「ピーツピ・ヂヂヂヂ」と鳴く。これは「警戒して・集まれ!」という意味だと考えられるが、鈴木さんはデータを編集して、順番を逆にした「ヂヂヂヂ・ピーツピ」という音声を作り、スピーカーでシジュウカラに聴かせる実験を行った。
すると、前者の鳴き声では仲間と共に天敵を追い払おうとしたシジュウカラが、後者では「そんなに警戒しないし、スピーカーにもほとんど近付いてこなかった」そうだ。シジュウカラの鳴き声には「警戒が先、集まれが後」のルールがある。しかし、ルールを破ると意味が通じなくなるのは、彼らが「語順」を理解していることを示しており、すなわち「文法」が存在することを証明している。