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土星のまわりを公転する衛星「エンケラドス」が、小惑星の衝突などが原因で地軸が傾いた可能性を示す証拠を、無人探査衛星カッシーニがとらえたと米航空宇宙局（NASA）が31日発表した。

土星の上空約24万キロを周回するエンケラドスは、太陽系の中で最も白く、表面は厚い氷で覆われている。

これまでのカッシーニの探査活動によって、氷の下には海があり、南半球の表面のひび割れからは、水素分子を含む熱い水蒸気が噴出していることが判明しており、生命の可能性が期待されている。

「タイガー・ストライプ（虎縞）」と呼ばれるこのひび割れについて調べている米コーネル大学のラドワン・タジディーヌ氏らのチームは、惑星科学誌『イカルス』で、ひび割れがある一帯は、かつて赤道付近に位置していたと結論づけた。

研究チームによると、タイガー・ストライプは、小惑星の衝突で氷がひび割れた可能性が高く、この衝撃で、天体内の構成成分に乱れが生じて、天体全体がグラグラ揺れるようになった。

何百万年もかけて回転が落ち着いたころには、北極と南極を結ぶ地軸が、元の場所から55度ほど傾いてしまったという。

この現象は、地球にも当てはまる。

地球は公転面に対して地軸が23.4度傾いていることで、太陽光が当たる角度が変わり、季節の変化がみられるわけだが、原始地球に天体が衝突した衝撃で地軸が傾き、飛び散った破片から月が生まれた可能性があると考えられている。（＝ジャイアント・インパクト説）

エンケラドスの研究チームは、「水蒸気の噴出が盛んな南極に比べて、北極はクレーターに覆われているエンケラドスは、地質学的な構造が北と南であまりにも異なる。直径500キロほどの小さな衛星に、惑星の衝突が与えた影響は大きい」と話している。