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🪓 メルティブラッド攻略・地方


No.654720
合計:
#197
前回はぁ>>196 闘劇で盛り上がる中ひっそりsage進行@一人舞台


紆余曲折があった。それでも、自分はそこまでたどり着いた。

「いらっしゃい、レン。待っていたわ」

スカートをつまんで優雅な礼をする白い鏡。自分とは全く正反対の自分がそこにいた。

「いかがだったかしら、私と同じ断片が溢れた町は?」

くすくす、笑う。私には出来ない表情だ。私は、あの。
一番最初の主人が好きだったから、真似をしたかったのかもしれない。そうも思う。

「これで、貴女にも日陰者の苦しみが分かったかしら?」

首を振る。

「っ……それとも理解しようとすらしないのかしら!?」

首を振る。これだけは、言葉で伝えなければならないだろう。

「私は……あなただから。あなたの苦しみは、私の物」
「ふざけないで! じゃあなんで私はこんなに苦しいの?
 いつも貴女の中で燻っているだけのはずなのに! どうして外に出たいと言う気持ちが生まれたの!?
 どうして外に出てこられてしまったの!? こんな事がなければずっと平和だったのに……!」

彼女は苦しんでいる。私も、それが凄く苦しかった。涙が出そうなくらいには。

「あぁ。でも、出遭ってしまったのよね。出会うはずの無い私と貴女が。
 私は、戦わなくてはならない。外に出られる喜びを知ったから。
 だから、貴女は私と戦って! それ位、私に許して!!」
「っ……」

涙すら凍りつかせる氷の一撃。
無骨な質量の塊が突如空中に出現し、小さな体を押しつぶさんとする。
紙一重で後ろに下がってかわすと、それは嘘のように消滅した。

「私は……貴女なんかに負けない! 貴女を倒して、私がレンになる!」

殆ど泣きながら吐き出される言葉が半分しかない心に傷をつける。
彼女がああなってしまったのは自分のせい。だから、自分でけじめをつけなくてはなるまい。
戦う決意が、固まった。
何もかもが白いその雪原で、黒い異分子たる彼女は。
そして、風景に溶けるようで確かに存在している彼女は。
自分自身を傷つけようと優雅に、そして悲しいワルツを踊りだした。

黒のレンが放つ薄く鋭い氷、白のレンが放つ無骨で重みのある氷。
それぞれの特徴を現したかのようなそれが交錯する。
しかし、勝敗の差は歴然だった。
子供の喧嘩の如く何が何でも攻撃を通そうとする白いレンに、遠慮しているのかどうしても決定的な場面を逃してしまう黒いレン。
本来、彼女達は同一。例えその性質に差はあれど、力に差が出るはずも無い。
今は白いレンがこの怪夜によって力を得ているだろうが、それも町に異変を起こすことに注がれている。
となると、必然的に気持ちの勝負になる。
結果、白いフィールドで妖精のように舞う白いレンが優雅な動きに精彩を欠く黒いレンを打ち落とす。

「───っ!!」
「この程度だったの、レン?」

もはや白いレンの涙は止まらず。本能のままに慟哭した。

「私が憧れていたものはこの程度だったの!? 答えなさいよ!!」

倒れた黒を叩く力も弱々しく。白は泣き崩れる。

「…………ごめん、ね」
「謝らないで! なんでこんなに惨めなのよ!? 私の、勝ちなのに……」

そんな二人だけ、しかし一人だけという奇妙な空間に。とうとう影絵の役者が辿りついた。


[ 怪夜舞台〜the night actor〜二幕 ]
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