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🪓 メルティブラッド攻略・地方


No.654720
合計:
#218
前回は>>217


結局白も黒も殺せず。むしろ助けてしまった形になり。七夜志貴は自分に大きく失望した。
しかも、結構な傷も負っている。
なんなんだこの夜は。まるで自分が自分で無い様で。
それもこの怪夜のせいだと落ち着けて。

「貴方……どうして?」
「あー……」

そのたった一言でいとも簡単に崩される。
何故、自分はこんな事をしている? とっとと白レンを殺せば事足りたはずだ。
でも、倒れた黒レンを見て推測してしまった。
こいつらは、自分と同じだ。そう思った瞬間、殺す気が失せてしまった。
いや、殺す気が死んでしまったというべきか。何せ、蘇る事が無い。

「参ったね。言い訳も考え付きはしない、アドリブに弱い役者だ、俺も」

そう白状して彼女の、白レンの隣に腰を下ろす。
これから告白する事は、もっと…………。

「つまり結局はこういうことだろうな。俺も遠野志貴であり、あいつも七夜志貴である。
 これに尽きる」
「どういうことなの? 私に分かるようにお話して頂戴」

顔に露骨な疑問符を浮かべてにじり寄ってくる白レンに苦笑いしつつ、ゆっくり思考を回す。
頭の中に渦巻いているこのもやもや感、それを言葉にするには冷静になって考えるしかあるまい。
元々、七夜志貴は会話に長けた人間ではないのだ。
戦うこと、ひいては殺すことが七夜志貴にとって一番の会話方法だから。

「例えば、だ。オマエ達が争っていたらあいつ、遠野志貴はまず間違いなく二人共傷つけないように……
 自分が傷ついてでも止めるだろう? でもあいつはそういう面だけを持っているわけじゃない。
 アルクェイドを一目見て理由も無く『殺したい』とかそういう衝動を起こす。
 それは俺の行動なんだよ。七夜志貴が七夜である由縁、その血の衝動なんだ。
 だからおそらく、俺も……これでわかるか?」

口下手な七夜はそうやって相手に話せることを話すと、あとは相手の解釈に任せた。
これ以上語ったとしても事態が複雑になるだけ。そういう直感はやはり鋭いものが有る。

「…………。
 つまり、貴方は七夜志貴であるけれど、同時に遠野志貴としての性質も内包している。
 彼、遠野志貴も同じく、七夜志貴としての一面を持っている。
 今回はそんな『遠野志貴』の一面が覗いただけ。貴方はそう言いたいのではなくて?」

驚いた。自分が言った事をことをここまでの速さで理解し、しかも分かり易く纏めるとは……。

「驚いた……白レンは賢いな」
「当たり前でしょう? 伊達に年月だけを重ねてきたわけではないの。
 それに…………」
「それに?」

優しく促す言葉に流されるように白レンも語る。

「私は、この子なんだから。それくらい出来て当然なのよ」

その言葉は確かな信頼。自分を死という最悪の闇から、自らを賭して救い出してくれた自分。
愛しいものに触れるように、白は黒を撫でる。それを見て、七夜志貴は知らず微笑んでいた。
柔らかい時間が、過ぎていく…………。


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