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🪓 メルティブラッド攻略・地方


No.654720
合計:
#222
前回は>>218 お願いだから書き込ませて……!


その、柔らかい沈黙を、七夜が茶化すような言葉で終わらせた。

「しかし、何かな? 随分角が取れたじゃないか、白レン」

そう、まるで俺のように、とは続けず。
ただ、その無意識の笑顔が白レンの頬を染めると言う効果を作り出していることに気付くことなく。
七夜志貴はごく自然に白レンと会話しようとしていた。
それは、貴重な分もしかしたら遠野志貴よりも遥かに魅力的なものだった。

「と、当然でしょう!? 私は……えっと、私」

言葉の先が見当たらず、口篭る白レンに、七夜志貴はこれ以上無い追い討ちを仕掛けた。

「特に理由がいるもんでもないだろう? それはオマエがオマエだから、なんだよ」
「っ……」

余計に言葉を失っていく白レンに、救いを差し伸べるように。
黒レンが身動きをした。

「あ……」
「お目覚めかい、黒のお姫様(プリンセス)」
「…………」

芝居がかった口調の七夜を一目見て。黒レンはひょいっと白レンの腕を抜け出す。
そして白レンと同じく、人の姿になって。これまた同じく七夜の隣に腰掛けた。
二人のレンに挟まれる形となって両手に花状態なのだが、それを気にするでもなく七夜は言葉を紡ぐ。

「しかし、下手をやらかしちまったよなぁ、レン。
 自分を殺してまで自分を助けようとする、なんてたいした矛盾じゃあないか」
「…………」

起き掛けには痛烈な一言がレンの胸に刺さる。慌てて弁護しようとする白レン。

「でも、それは私を助けようと」
「待て待て、人の台詞を遮ってまで自己弁護に走るもんじゃないぜ、まったく。
 俺が言いたいのは、自分すら信じられずにどうするんだ、ってことだ。
 幾ら助けたかったと言っても、それじゃ二人共救われない」
「「…………」」

やれやれ、と首を振りつつ放たれる台詞に、反論を殺されるレン二人。
この男は、実は短刀等なくとも強いのかもしれない。

「ま、待て待て……黙っちまう事はないだろう?」

その沈黙が完全に自分の言動に依って引き起こされた感動のせいだと理解できていない。
ここらへんは流石に会話慣れしていない事が純粋な仇となっていた。
やがて、会話を諦めたのか溜め息が一つ。

「これはオマエ達の問題だからな……俺が口を出すまでも無かった、か。
 俺はそろそろ逝くとするか。いつ消えるとも知れぬ身だ、ふらふらしているうちに千切れて消えるだろうさ」

起き上がり際、その防御不能の隙に。学生服の両袖をがっしりと捕まえられた。
正に一心同体の動き、両側からだからもちろん対処のしようなんてない。

「待て待て……俺を引き止めたっていいことなんざないぜ?
 それとも折角逝き遺ったってのに、無駄に命を危険に晒す気か?
 止めはしないが……何時気が変わるともしれないぜ?」

七夜が三連続で尋ねる。対してレンは何も言う事は無く。白レンですら黙ったまま。
答えが無い事に、肩を竦めようとして失敗する。やがて、恥じらいを含んだ告白。

「いいの。今は、側にいて?
「…………」

再度の、溜め息。それは先程と同じく諦めを含んだもので。

「他にやることなんざ無い……付き合わせて貰うとするさ」

腰を下ろす体に、心なしか嬉しそうな体が二つ、もたれかかっていく。
その体の重みを感じつつ、七夜志貴は沈黙に身を任せる事にした。


[ 『七』人演舞 六 鏡の片鱗 ]
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