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2024/08/07 11:39
爆サイ.com 南東北版

🪓 メルティブラッド攻略・地方





NO.654720

【君も作れる】あなざーすとーりー2【物語り】
合計:
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#2512006/06/10 09:23
……ってバカーっ!!
このコテSSはSSでもメルブラのじゃねーよ…orz
ほんと寝ぼけてるな、俺


「…っ……!!」
アスファルトの地面が目の前に……降ろしてくれたの?
助かった、と思ったら、涙が止まらない。
「……いきなり、何す…ッ!?」
ぎらり、と輝くモノを突き出された。それは、街灯かも月光かも分からない、淡い光を跳ね返す白刃。
……おもちゃ…じゃない、の…?
「あんた、誰なの…?」
……ちっ。
今の音、舌打ち?……もしかして、何か言おうとしてた?
悪いことしちゃったかな、なんて思う。でも、すぐにその考えを振り払う。
私、今、こいつに殺されかけたんだよ?何で私が遠慮する必要があるのよ。
それじゃあ私がバカみたいじゃない。
「…何とか言いなさいよ?」
そうよ、きっとこいつ、痴漢なんだわ。
でも私があと少しで死んじゃいそうだったから、動揺して何も言えないんだ。…舌打ちは気になるけど。
慰謝料たっぷり貰ってやるんだからっ!!
「……あんた、住所は?名前は?誕生日は?好きな色は?何座?始めて買ったCDは?」
こんだけ聞いておけばきっと警察も動いてくれる。そしたら慰謝料ゲットは確実よっ!!
「……くく…っ」
何か私、変なことしてる?いちいち頭にくる痴漢ね…。
「何を言い出すかと聞いていれば、お前は俺と見合いでもしたいのか?
……誕生日だの、好きな色だの、星座だの。恋の占いなら他の男とやれ」
「こっ…!!誰があんたみたいな痴漢と恋占いするのよっ!?
恋占いってのはねぇ、あんたなんかとは違ってハンサムでクールな感じの、人…と……」
街灯に照らされた、そいつの表情。
切れ長の目は私を真っ直ぐに見つめている。口元には憂いとも取れる僅かな笑み。
(……ヤバいわ、こりゃ…)
顔の作りの一つ一つは志貴君によく似ている。だが、どこか違う。どことは言えないが……そう、雰囲気が。
「何だ、言ってみろ」
この場を楽しんでいるかのような、余裕すら感じ取れる声。
「………訂正。あんたには、身体で罪を償ってもらうわっ」
「?…何のことだ」
「だから…わ、私の彼氏になりなさいっ!!それで、今日とても不幸な私を慰めなさいっ!!」
「……くくっ…」
顔を手で覆い、堪え切れない笑いを漏らすそいつ。
「何よ、嫌っていうの…?
い…嫌なら……その、友達から、でも…」
「……くくっ、腹が痛い…ふ、ふふっ…」

何よ、何よ、何なのよ?
馬鹿にして…っ!!

[匿名さん]

#2522006/06/10 10:06
「くくっ……いや、すまない。
まさかこうして現世に存在を持って、お前のような"馬鹿"に出会うとはな。やはり俺は見放されているようだ」
……現世に、存在?何言ってるの?
「あんた、志貴君…じゃないよね。
………あ、志貴君ってのは私のクラスメイトなんだけど、あんた、どうもその子に良く似てるのよ」
「…っ……待て待て。今、呼吸を整える…。それまで俺を笑わせるな…?」
すぅ、はぁ、すぅ、はぁ。
「……俺は志貴だ。ただし…いや、説明した所で分からんだろう。とにかく俺は志貴だ」
「…意味分かんない。とりあえず私を慰めなさい。愚痴だけ聞いてくれればいいから」
それは本音だった。この志貴君なら、どんな悩みでも鼻で笑って、すました顔で「そんなことか」と言ってくれそうな気がするから。
「……いや。残念だがそれは出来ない。俺には今日中にやらなければならないことがある」
「…じゃあ、それが終わるまで待ってる」
「……酔狂な女だな。分かった、必ず戻るからここで待っていろ」
「うんっ♪」
………それが嘘だってこと、志貴君の目を見て分かったよ。
志貴君が戻ってこないこと、私にも分かったよ。
でも、私、待ってるから。
朝が来るまで、待ってるから。
だってそうした方が、悲劇のヒロインって感じでしょ?
今日の私は本当に不幸なんだから、それくらい気取ってもいいよねっ?


「……人間か」
刈り込んだ頭に、ロングコートを着た男。混沌(カオス)の名を持つ人外。それが、ネロだった。
ネロがこの公園に現れたのは、偶然以外の何でもない。
「…………」
そして、疲れて寝てしまっている人間を見つけたのも、ただの偶然でしかなく。
「………行け」
その人間を食おうと考えたのも、また、偶然。
「…んっ……。
え…?何これ、やだっ…!?」
身体が、溶かされる?
何これ、私…あぁ……っ。
やだ、やだ、やだ。
し、き、くん…た……す…。
「……本当に済まない。遅くなってしまった」
ざくり。
それは、目の前に現れた志貴君が斬った音。
斬った?何を?
あれ?私、どうなって…?
……。
………。
…………。


「……食事の邪魔をした詫びをしなくてはな。こいつの命、混沌の檻に入れてしまうには惜しいんでね」
「いや、構わぬ。代わりに貴様を取り込んでくれよう」
…済まない。だが溶かされる前に殺すしかなかった。
殺さなければ、二度とお前に会えなくなってしまうから。

[匿名さん]

#2532006/06/10 10:31
どれくらい、歩いたんだろう。時間の感覚もない。距離の感覚もない。
志貴君に殺されたのは、どれくらい前だったんだろう。
数時間…?それとも数日…?まさか、数年前…?
……分からない。
もう疲れた。死んでまで疲れるなんて思ってもいなかった。
溜め息を吐く。座り込む。周りにいるのは、死者ばかり。私も、その一人。
「……ようやくだ。この瞬間をどれだけ待ち侘びたことか」
声が、聞こえた。
顔を上げる。
街灯もなく、月光もない世界で、突き付けられた白刃は…ぎらり、と輝いた。
切れ長の目。にやりと曲げられた唇。
「う…っ……やっと、会えたよぉ…志貴、くん…っ」
「死者になってまで涙を流すとはな、どう贔屓(ひいき)したってお前は普通じゃない。
……あの時、殺しておいて正解だった」
志貴君が、私に"微笑んだ"。
「…ありがとね……っ。あのままだったら、もう会えなかったよね……っ?」
「そうだな。俺も今ごろ、退屈していそうだ」
「どういうこと…っ?」
「……お前の話を聞くためだけに探し回ったんだからな、俺を退屈させるな」
「退屈させないよ…っ」
「……先に言っておくが、俺はかなり眠いぞ」
「寝ちゃったら…起きてから続きを話してあげるよ。だってここは……ねっ?」
「あぁ、そうだったな……ならば急くこともない。
少しずつ聞こう。お前のことを…」



──ここは亡者の住む世界。故に時に終わりはなく、二人の時間は長く…永く、続いていく。

[匿名さん]

#2542006/06/10 10:38
はい、『恋に焦がれて嘘と消える』の完結です
短くまとめようとしたので、意外とあっさり読める……はずw


え……ネロと七夜、どっちが勝ったかって?
亡者の世界に帰って来た=混沌の一部にならなかった=七夜が勝った
ってことなのですよw

[匿名さん]

#2552006/06/10 15:22
ギルオタ乙

[匿名さん]

#2562006/06/10 16:49
ごめんね、ギルオタでごめんね(つд`)

[匿名さん]

#2572006/06/10 23:26
少し見ぬ間に糞過疎ってるなぁ。私も続きを書いたほうがいいのかなぁ。

>>250
地の文のギャル口調が新鮮ですねー……
ただ、そんな寒いくらいの季節に公園で寝てたら凍えちゃうかとw

勇気を出して職人様降臨期待あげ。

[匿名さん]

#2582006/06/11 00:00
>>257
大丈夫っすよ、メルブラの季節は夏なんでw
ちょっと寒い→ちょっと肌寒い
こっちのが良かったかな…

[匿名さん]

#2592006/06/11 11:18
久しぶりにスレ覗いたら職人が降臨されとる!グッジョブ!

[匿名さん]

#2602006/06/19 23:42

[匿名さん]

#2612006/06/24 17:19
必要なくとも保守る

[匿名さん]

#2622006/07/06 16:03
学生が試験勉強している?

[匿名さん]

#2632006/07/12 02:54
男が立っている。

逞しい。全身を包み絞り込んでいる筋肉は、鉄を彫刻したように硬く、重い。
表情がない。鉄に表情がないように、人間の形をしていながらその男には表情がない。
一つの鉄塊が、そびえ立っているようでさえある。

男が立つ室内は、無骨だった。
コンクリートで固められた一面は灰という鈍色で満たされ、まさに牢と呼んで差し障り
ない重苦しさが支配している。
けれど男には、そんな無骨が何よりも相応しく見えた。

「失礼します」

指の骨が、軽く鉄を叩く音。
打たれた鉄は男ではなく、正銘の鉄で拵えられた牢の扉。
同じくして響いた高い声色は疑いようもなく女のものだが、全てが重いこの空間は
男も含めてそれを全く受け入れない。

———き、きぃ。
返事の無いことを知っている女は、至極緩やかに扉を開け始める。
と言うより、それ以上の速度では不可能だった。身の丈を超えるほどの大きさと重量を
持つ厚い鉄扉は、その細腕が震え、その顔が歪むほど懸命に押したところで、蟻に越される
程度の早さでしか動かない。

しかし、今は違った。
華奢な身体が挑まんとした刹那に、扉が自ら開いたのだ。
その一瞬のみ、まるで木造にでも変わってしまっていたかのような軽さだった。
鉄の板が退いた奥には、鉄の男が立っていた。

「……置けば良いと言っている」

豪腕が、細腕から盆を取り上げた。
質素な食器が擦れあい、部屋には不似合いな高い響きをたてる。

「申し訳ございません、出立の御支度を手伝わせて頂こうかと」
「要らぬ。元より持ち合わせる物など無い。送りも不要だと、言っておけ」
「はい……」

女の声は、落胆ではなく無念。
三年もの間、一度としてこの部屋から出る事はなく、出ようとする事もなく、日に三度現れる
瞳の色と同じ名を持ったこの女に対しても、自ら口を開けることは決して無い。
牢屋そのものと言える室内に、もう一つの牢が在るようだった。

女は、似た環境を知っている。
同じなのは、出ないことを選んだ事。
違うのは、出ないことを望んだ事。

「何処へ、行かれるのでしょうか」

返答を期待した問いではなかった。
元々ここにさえ、誘いが来なければ訪れる事など無かった筈。
明日から、また人里を離れたどこかに行くのだろう。そしてそれは、自分の知れる処ではない。
間違っても人間に知られるような場所に、この男は存在を許されないからだ。

「……だ」
「はっ?」

「————森、だ」

森。
それは何処にでも存在し、幾らでも群生し、誰であろうと受け入れる自然の巣。
当然、そんな一文字程度で所在の宛てなどつく筈もない。

「左様ですか」

女の声に無念はない。

「行ってらっしゃいませ、軋間様!」
「……む」

男は、太陽に照らされていた。
背後から射す光のほうが偽りかと思えるほど、女は眩しかった。
三年。思えば三年という時間で、この琥珀色の宝石はここまで磨かれたものなのか。
腐食と見えるほどに爛れ、錆びに犯された人塊が、今はこんなにも人間だ。

しかし、鈍色には何も写らない。照らし返すことなど出来ない。
女が去るまで、重く冷たい灰色が支配する牢の中、男もまた冷たい鉄であり続けた。
右手に残された盆から沸く白い湯気が、男の周りを包もうとして、敵わずに冷たい部屋
へと消えていく。


...

[匿名さん]

#2642006/07/12 02:58
少し珍しい組み合わせです。
色々とあえて省略してますが、一応、月姫本編をある程度やり込んでいれば
理解不能なことはないと思います。

久しぶりですが、これにて失礼。

[匿名さん]

#2652006/07/13 20:40
>>263
うーん、雰囲気で読ます文ですねぇ……なんとも良い感じです。
紅赤朱の青年と人形だった少女。綺麗に纏めるってすごいですね!

[匿名さん]

#2662006/08/07 14:02
誰かいるー?

[匿名さん]

#2672006/08/07 17:27

[匿名さん]

#2682006/08/07 22:17
いることはいる

[匿名さん]

#2692006/08/08 23:59
>>266
結局聞いただけ? うpするならwktkして待っているのだけれど。
誰かー、職人さーん?

[匿名さん]

#2702006/08/09 00:28
>>229
三人? と落ち込んでいたところです(´・ω・`)
ええ、もう……散々うpしまくってますよ……このスレでも前スレでも;

そんなにwktkしてくれるのなら、また投下するかも知れません。

[匿名さん]

#2712006/08/10 11:48
PS2版メルブラ 七夜のオマケボイスで「あんぱんを食す」を言ってくれてるとは

[匿名さん]

#2722006/08/11 14:06
ごめん、流れが気に入ったもんで萌えスレ160-161に投下してしまった……
勢いで書ききったから余り良いものじゃないけど、飢えてる人がいたら
読みに行ってあげて下さい。

[匿名さん]

#2732006/08/11 21:12
>>272
いまさっき見たよ
遅くなったけどGJです

[匿名さん]

#2742006/08/11 22:57
>>273
ありがとう。
こういうのは軽く読むのが一番楽しいと思います。

[匿名さん]

#2752006/08/11 23:12
>>272
やけにこなれた文章だと思ったが……やはり、アナタが職人か。
普通においしくいただきました! GJ。

[匿名さん]

#2762006/09/11 01:33
人いるか・・・?

[匿名さん]

#2772006/09/11 13:26
いるよ

[匿名さん]

#2782006/09/11 17:07
返事したものの、なんか空しかったのでちゃっちゃと書いてみる。
>>276の「誰かいるー?」を出発点に、アドリブでw



「誰か、いるのか……?」
「はい」

曲がり角の向こう側。
互いに死角となる場所からの声に、私は動じることなく応え、姿を現した。

「なんだ、シオンだったのか。こんばんは」
「こんばんは、志貴。
 まだ見回りをしているのですか? タタリはもう去ったというのに」
「いやいや、そこまで俺も暇じゃないよ。今は、ほら」
「その袋……Convenience storeですか」
「コンビニ、でいいよ。和製英語だし。
 ちょっと愛用のシャンプーとリンスが同時に切れてね。門限も過ぎてたから
 こっそり出てきたんだ」
「それが成功したとは思えませんね」
「はは、正解。琥珀さんに見つかったけど、秘密にしてもらった」

くすくす、くすくす。
何てことのない会話に、自然と顔がほころぶ。
これは私が、彼との会話を内容ではなく行為そのもので楽しんでいるからだろう。
張り詰めた心を緩ませる何かが、彼にはある。
それは今まで当然と思っていた、アトラス院や過去の路地裏生活のものとはある意味対極。
今だからこそ自覚できるが、アトラス院では”気を緩める”という概念など存在しなかった。
さつきという大切な友人が出来なければ、きっと路地裏生活も同様だったに違いない。

そして私は、半年ほども前。
この概念を初めて教えてくれたこの少年に————

「あ……」
「シオン?」

赤。
単色に視界が染まる。
この赤は。信号。消火栓。サイレン。どれよりも勝るこの赤は。

「おい、シオン」

彼の声が響く。
その振動は私の中を、心の臓を、喉を、眼球を。
ああ、なんて懐かしい。
これは血だ。赤い血だ。紅い血だ。アカイチダ。
ア・カ・イ……!

「うっ!」
「?」

跳躍しかかった私の足を、カレの呻き声が止めた。
胸を抑え、苦しげに蹲るカレの姿が、理性を私にしがみつかせた。

「シ、キ?」
「いや、大丈夫……。こんなの何時もの発作だか、ら」
「シキ」
「ぐっ!」
「シキ……」
「あ、がっ!」

呼ぶたび、カレは胸と頭まで抑えつけながら叫ぶ。
抗っているのだ。
この、血の色の瞳をした今の私を、人以外の物として消そうとする本能に、理性で。
不意をついたものだからか、以前”この状態”で対峙した時の気丈さはどこにもない。
弱々しい。軟弱。格下。

「シ……志……」

無抵抗。無防備。

「貴……キ……」

———獲物。

「シキッ!」



...

[匿名さん]

#2792006/09/11 17:08
———やはり、弱さなのだろうか。
緩みというものを知った私は、ああも簡単に流される。
常に張っていれば、いつ来ようとも抗えるはずだ。抗えていたはずだ。
三年もの間、私が吸血衝動を抑えていられたように……。

「そんなコトないよ、シオン」

さつき。私の友人が、隣に並んで座っている。
志貴へ飛びかかるのを、すんでの所で止めてくれた大切な友人。
私は月を見上げているので、彼女がどちらを向いているのかは分からない。

「そもそも、その時はまだ完全には吸血鬼になってなかったんでしょ?
 今は違うんだから、それは仕方ないよ」

勿論、理屈の上ではそうだ。
半年ほど前から、私の目はもう赤以外の色に光ることはない。
カラーコンタクトを使用しても、明確に衝動が起きるとそれすら貫いて紅く輝く。
もはや言い逃れようもなく吸血鬼と化したこの身体が、以前より遥かに大量の
衝動を沸き起こすのは当然だ。
けど、それでも半年は耐えられた。
以前の三年の時とも、さほどの違いは見られなかった。元々タタリの残した
吸血衝動など、私には些細な問題にすらならないのだから。

つまり、先程の衝動は。
とうに諦め……いや捨てたはずの彼への思いを、もう一度。
ただそれだけの、タタリとは何の関連もない、私個人によるものだったのだ。

今でも彼への思いを捨てたことに後悔はないし、迷いもない。
だというのに、偶然出会い、軽く話し、少しだけ笑い合う。そして昔を思い出す。
それだけの事で。
たったそれだけの事で、私の決意と理性はあんなにも容易く……!

「シオン、ほら」
「?」

さつきが、一枚の布を差し出した。

「ハン……カチ?」
「あれだよ。この前、私が泣いちゃったときにシオンが貸してくれたやつ」
「あ、ああ。そういえば返して貰っていませんでしたね。
 しかし何故、今になって」

不思議そうな顔をすると、さつきはクスッ、と吹き出した。

「シオン、気づいてないの?」

さつきの白い指が、私の目尻を優しくなぞる。
その指先は、雨の中に差し出したように濡れていた。
……私は、自分の涙というものを初めて見た。

「嬉しかったんだよ、私。シオンになぐさめてもらって。
 だから私もしてあげたいな、って。シオンの事だからいつになるかと思って
 たけど、案外早く返せちゃった」
「恥ずかしい所を見せしました」
「あはは、お互い様だよ。私だって見られちゃってるんだし」

くすくす、くすくす。
夜の冷たい空気には、高い音がよく響く。私の声も、さつきの声も高く明るかった。
そういえば。笑うという行為も、この町へ来て初めて覚えたものだった。
それを教えてくれたのも、また———

「志、貴」
「え?」



...

[匿名さん]

#2802006/09/11 17:08
涙を流したせいだろうか。今度は何も沸き起こらない。
腫れて赤くなった目尻が、瞳から溢れてくる赤をせき止めているような感覚。
先程はあんなにも容易く流された衝動が、今はこんなにも矮小だ。
今、だけなのかも知れないが。

「シオン、何か言った?」
「いいえ。
 それよりもさつき、貴方はなぜ彼への衝動を抑えられるのですか?」
「え。か、彼って……」
「いま貴方の頭に浮かんだ人物です」
「ぜ、全然。抑えられてなんかないよ。
 会うたびにパンクしそうなくらい沸いてくるし、今だってひょっこり目の前に
 来られちゃったらどうしようかと思ってるんだから!」
「それでも実際に及んだ例は、過去一度しかない。確率でいえば1%以下です」
「そりゃ、そうかも知れないけど……うーん」

そう言われても困ってしまう。そんな感じで、さつきは深々と悩みこむ。
その様子はとても儚げというか危なっかしく、本当に今志貴が現れたのなら一目散に
襲い掛かってしまうのではないだろうか、とすら思える程だ。
なのに彼女は、耐えてみせる。
本当に現れたのなら、抑えてみせる。

「もういいです」
「え? いや、そう怒らないで待っててよ。もう少しで……」
「違います。私なりに解釈できたので、もう良いんです」
「解釈? じゃあシオン、分かったの!?」
「ええ」
「教えて、教えてー」
「ダメです。さつきのそれは、無自覚だからこそ武器になる。
 完全にモノにしたとき、自身が教えてくれるのを待つことです」

何それー、とむくれるさつきを横目に、私は再び月を見上げる。
ぱんぱんに張り詰めた満月が、一切の余裕もなく必死に夜空を支配している。
そこを風のままに流れてきた雲が、遠慮なく月を覆い隠し、また抜けていった。

さつきは、常に一生懸命で必死ではあるけれど、どこか緩い。
それはきっと、懸命な自分に呑まれないよう彼女なりに身に付けた、自衛の武器
なのだろう。
適度に緩めているからこそ、必要なときにハッキリと、力強く張ることが出来る。
張り続けることしか頭になかった私のそれでは、摩耗してしまって当然だ。

三年間耐えられた。それが何だと言うのか。
私の生涯はその十倍以上もあるというのに、たった三年で摩耗するのでは意味がない。
緩さ。
半年前に初めて知ったそれは、もっと活用すべきものなのかも知れない。この弓塚
さつきという、大切な友人のように。
まぁ、もっとも————

「さつき。指をしゃぶるのを止めなさい」
「え? あ、バレちゃった? えへへへ」
「……確かに、涙も体液には違いありませんが。何故か不快です。
 ほら、同じ指ならこちらの方が良いでしょう」
「え、いいの?」
「牙は立てないで下さいね」
「わあい、久しぶりにシオンの血だー!」

軽く出血させた私の指に、むしゃぶりつく犬のような友人。
いくら見習うといっても、流石にここまで緩むのは……

(「わあい、久しぶりにさつきの血ですー!」)

個人的に遠慮したい。
何がなんでも遠慮したい。
少しの寒気を感じつつ、さつきは一体あと何時間何分何秒吸い続けるのだろうか
と、私は無駄な高速思考を展開してみた。



...End

[匿名さん]

#2812006/09/12 00:00
GJ
久しぶりに来てみたら投下されてたんで驚いた。

[匿名さん]

#2822006/09/12 00:52
>>281
ありがとうございます。
まぁ、今更ここに投下しても寂しいだけなんですが(^^;

萌えスレ160-161に投下したやつ読んでないとハンカチの意味が分からんと
思うので、もし未読ならそちらもどうぞ。

[匿名さん]

#2832006/09/12 01:20
>>281
276だけど、一緒に盛り上げていこうよwね。

[匿名さん]

#2842006/09/12 21:24
>>283
残念ながら俺には文才はないんだな
多少といっても人に見させられる程のものでもないが絵を描くくらいだし

[匿名さん]

#2852006/09/12 21:26
ごめんよ、>>282宛てだったorz
でも読者いてこその書き手だからいてくれて安心した

[匿名さん]

#2862006/09/15 18:57
過疎ってますね。

[匿名さん]

#2872006/09/15 20:17
過疎ってますねー。続き全然書いてないしw

[匿名さん]

#2882006/10/01 21:17
age

[匿名さん]

#2892006/10/23 20:53
新参者だけど書いてOK?

[匿名さん]

#2902006/10/24 11:12
むしろ書いてください

[匿名さん]

#2912006/10/24 20:22
グ〜という音。
それは誰が出した音だったのか。
「シオン〜…おなかすいたよ〜…」
それは両者のお腹から発せられた音。
一昨日からお互い何も食べていない。
吸血鬼と言えど流石に限界が近い。
「そうですね…。しかし調達しようにもあてがありませんし…」
志貴の家を訪ねるという手もあったが、あの坂を上りきる前に力尽きそうなので言わないでおいた。
太陽が憎い。
それに、たとえ上りきれても食料の為だけに他人の家を訪問するのは遠慮したい。
「「う〜ん…」」
私達は口をアルファベットの『M』に、目を波ダッシュ『〜』にして悩んでいた。
「そうだ!遠野くんの家に…」
「ダメです。というよりイヤです」
え〜なんで?などと聞き返してくるが、ダメなものはダメだのだ。
志貴には私のこんな姿を見せたくない。
かと言って、このままだとマズい。非常に。
「コンビニのお弁当は?」
「七夜志貴に先を越されました。彼の水月は日に日に磨きがかかって来ている」
あの動きは…見事でした。
「うー…こうなったら」
「こうなったら?」
さつきはガバッと起き上がり、自分の両手を見つめながら。
「ねえシオン。人間って何で腕が二本あると思う?」
「さつき、早まってはいけません」
「う〜…」
さつきは又地面にバタンと倒れ呻いている。

もう一度グ〜とお腹がなった。


続きます。短すぎたかも知れない。

[289]

#2922006/10/24 21:56
キャラが壊れてる気がする。
大目に見て下さい。



「お困りかい?」
唐突に声がした。
このキザで芝居がかかっていて尚且つ私が好意を抱いている人物と同じ声の持ち主…。
「七夜…志貴」
泥棒王子!
「今名前と一緒に、酷く失礼な事考えなかったかい?」
「失礼なのは貴方です。ここは私とさつきの領域です」
キッと睨みつける。
「あ、飯いらないの?分けてやろうと思ったんだが」
もう一度キッと睨みつける。王子が右手に持った、コンビニ『狼存』のビニール袋を。
さつきもエラい形相で見つめている。
それはもう言葉では表せない程の表情で。
「っふ。私が食料如きに釣られるとでも?」
「釣られるんだろ?」
「もちろん。頂きます」
人間、素直が一番ですよ。吸血鬼ですけど。

「ご馳走様でした」
合掌。
さつきはオニギリ3つ。
私はオニギリ2つを貰った。
「助かりました。今回は感謝します」
「どういたしまして」
七夜志貴は買ってきたレモリアを飲んでいる。
「それにしても、私がツナマヨ好きだと良く解りましたね?」
「いや、勘」
勘…。
「私が梅好きだって解ったのも勘?」
さつきが口を出してきた。
「いや、梅ってかなり一般的なオニギリだろ?弓塚は…まあそんな感じ」
あ、この人酷い。
当たってるとはいえ、本人の前でそれを言うのは失礼ではないだろうか。
「私って…梅っぽい?」
どっちかって言うとシーチキン。
理由を聞かれると困るけどシーチキン。
「で、飲み物は何が良いんだ?珈琲と茶がある」
出されたのは缶コーヒー『Nrvnqsr』と、ペットボトルの『和良茶』だった。


選択肢1
1.缶コーヒー『Nrvnqsr』を飲む。
2.ペットボトル『和良茶』を飲む。
3.七夜の血を食す。
4.軋間が登場。

[289]

#2932006/10/24 22:14
GJです

ここはあえて4で放尿衝動!

…冗談です。1を希望

[匿名さん]

#2942006/10/25 15:12
冗談は具現化する。
1と4です。



「じゃあ私はコーヒーを」
「ホイ」
投げてよこされる混沌印のNrvnqsr珈琲(無糖)
「じゃあ私は和良茶貰おうかな〜」
今気づいたが、和良茶のラベルには
『厳選茶葉以外はカットカットカット! さっぱりとしたタタリ風味に仕上げました。』
と書いてある。
どんな味だ…。
そんな私の飲んでいるコーヒーは滅茶苦茶…苦い。
「さつき…貴方の飲んでるお茶はどの様な味ですか…?」
「言葉で…表現できない…」
余程キツイ味の様だ…。
「その…七夜志貴。この飲み物も狼存で?」
「いや、軋間に貰った」
なッ…。
軋間といえば時折街中で見かける渋い声のホームレス小父さんじゃないですか。
路地裏同盟のNEWメンバーに加えようか検討中。
「軋間は色んなドリンクを持ってるからなぁ」
そうなんだ…あの小父さん、そんなチャームポイントを持っていたのか。
「呼んだか?七夜」
「「「わひゃぁ?!」」」
唐突に現れた軋間小父さん。
思わず3人の声がハモって「わひゃぁ」ですよ。
「いや、そんな驚かなくても良いだろう」
「驚きますよ普通」
珈琲をこぼしてしまった。
さつきも「お茶が気管に!」と叫びながら咳いてる。
「別に俺は呼んだ覚えは無いが、折角来たんだ。何かまともな飲み物は無いのか」
「まともな…。『マジカルK・H・K(コ・ハ・ク)』とかはどうだ」
飲み物に『マジカル』ってついてる時点で怪しい。
「ちなみに効果の方は?」
「新陳代謝が活発に。放尿衝動!」
「いりません」
ちなみに色は青紫。
怪しいというより恐い。
「○龍茶とか無いんですか?」
「鳥○茶?あぁ、あるぞ」
「初めからソレを出してくださいよ…」
七夜はレモリアを飲みながらニヤニヤと此方を傍観し、さつきは未だ咳いていた。


選択肢2
1.ドキッ!突撃・遠野家の地下室『琥珀さんが見てる』
2.生命保険はいかがかね?ワラキア登場。
3.ケーキは…あるの?空腹の白レン登場。
4.負けでも良いから働こう。路地裏メンバー、バイト始める。

[289]

#2952006/10/25 18:50
3

[匿名さん]

#2962006/10/25 23:53
>>293
GJサンクス。
頑張るよ。

>>295
選択肢が選ばれてから書いてるからもうちょい待ってね。

[289]

#2972006/10/26 20:52
出来たーorz


「そういえば白レンは?」
「「あ!」」
七夜が呟いた一言で私達は白レンの存在を思い出した。
「『あ』って…お前ら結構酷いな」
「あはは〜…、白猫さんなら確かその辺で…あ、ほらあそこ」
さつきは路地裏の隅のほうを指差す。
そこには、寝ているのか倒れているのか死んでいるのか解らない白い猫が居た。
「…」
誰もが言葉を失った。
体がプルプルと小刻みに震えてる辺り、多分泣いている。
「あの、白レン?」
七夜が恐る恐る声をかける。
「うるさいわね!」
涙ぐんだ声で反抗する白レン。
ツンデレって難しい…。
「そ、そこの夢魔。別に誰も除け者にしようとしてやった訳じゃなくてだな」
「影が薄いって事でしょ?解ってたわよそんなの…グスン」
軋間に人を慰めるのは不可能だろう。
特に自虐モードの白レン相手だと。
「影が薄いなんて事はありませんよ。自分をそんなに悲観するものではありません」
白レンの隣に座って頭を撫でる。
「グスン……ケーキ」
「はい?」
「ケーキは…あるの?」
そういえば今、白レンのお腹からグ〜と音がなった気がする。
なるほど、何も食べてないのはこの子も同じだという訳だ。
「七夜。ケーキはありますか?」
「勿論だ。チョコレートケーキが良いんだろう?」
七夜は狼存の袋からケーキを一つ取り出した。
「お嬢さん。貴女の為に用意しましたこのケーキ。どうぞ召し上がれ」
七夜が不良モードから紳士モードへ切り替わった。
「ッ───!」
その場に居る全員が思わず赤面した。
軋間も含めて。
「あ、ありが…とう…」
白レンの動きがどこかぎこちないのは、七夜志貴と遠野志貴を重ねて見ているからだろう。。
七夜は某赤い弓兵の様な笑みを浮かべている。。
「どうだ白レン。美味しいか?」
「え、ええ」
あの二人見てると何故か殺意が沸いて来る。
「そういえば飲み物は要らないのか?」
軋間が鞄をゴソゴソとあさりながら聞いてくる。

※注意:ケーキには紅茶 というのは289の勝手な解釈です。スルーしてください。

ケーキに合う飲み物って言えば紅茶だろう。
七夜もそう思ったらしく
「紅茶あるか?」
と聞き返している。
「紅茶か。ふむ、しばし待て」
軋間は鞄の奥の方に手を入れて探している。
「あった。『赤主・紅茶』だ」
なんだそのネーミング!
「…他の無いのか?」
「む、贅沢だな七夜。まあ良かろう。探してみよう」
再びガサゴソと鞄をあさる軋間。


選択肢に限界を感じた。
ので、これからは皆にストーリーを提案して貰おうと思うんだが。
そんな訳なんで、紅茶の名前を考えて欲しい。

問題1
これから軋間が出す紅茶の名前は何でしょう?
皆で考えてみよう。
↓の数人、頼んだ。

[289]

#2982006/10/26 21:19
紅茶カデンツァ

・・・・・・安易すぎるかッ

[匿名さん]

#2992006/10/27 16:39
紅茶提厭浄

[匿名さん]

#3002006/10/27 16:50
軋間紅茶

[匿名さん]

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