🛎️ 男子プロレスラー

ﾘﾝｸﾞと観客。両方をｺﾝﾄﾛｰﾙできる技能を身に付けていないとﾋｰﾙはやらせてもらえない。
日本人ﾍﾞﾋﾞｰﾌｪｲｽが人気が出るはずもなく、試合も週に2〜3試合しか使ってもらえない。
天龍は自分の役不足を痛感しながら失意の日々を送っていた。

そこへﾌﾛﾘﾀﾞから一本の電話が鳴る。
声の主は高千穂明久(ｶﾌﾞｷ)からだった。
天龍の置かれている状況を把握した高千穂は
｢そんなことをしていても仕方がないからﾌﾛﾘﾀﾞへ来なさい｣

天龍は喜び勇んでﾌﾛﾘﾀﾞへ向かった。

やっぱり凄いなぁ…[元おっかけ]さんを一文字で表すなら｢極｣ですねあくまで個人的な見解ですが。読んでいて、ためになったり楽しいのが本当のレスです潰されないでプロレスカテを支えた貴方を誇りに思います

いつも深夜に朗読させてもらってありがとうございます

実はワタシは闘龍門の試合でその時のイベントスタッフになった事がありまして、その時に天龍さんとお会いしました

選手がみんな横一列になって礼してました。最初はヤ○ザかな？とか思いましたがスタッフ一人一人にお疲れ様と微笑む優しさ
何よりヤク○的な威圧感がない

観戦するのに席を二つ使うのに申し訳なさそうにする仕草とかが印象的でした。
しかも当時52歳で現役と聞いてビックリ！
そんな訳でそれまでプロレス無知だったワタシが初めて興味を持ったのが天龍さんでした。
それ以後直接お会いする事はありませんでしたが、ハッスルでまだ活躍されてて嬉しかったです！
2009は情報がなく…

このスレで天龍さんを知れて感激です！

毎晩朗読できて最高です！
これかもよろしくお願いします！

天龍源一郎ゎ長州力と違って全ﾚｽﾗｰからリスペクトされりゅ存在れしゅからね

>>351いやいや、ﾘｯｷｰさん。極めとかはないです。
ｱﾒﾌﾟﾛのｽﾚ。どんなｽﾚにするのか構想を練っておいて下さいね。

>>352
羨ましい貴重な体験をされてますね。
僕もﾌﾟﾛﾚｽに興味持ったきっかけは幼少の頃に見たﾁｬﾝﾋﾟｵﾝｶｰﾆﾊﾞﾙ公式戦。
ｼﾞｬﾝﾎﾞ鶴田vs天龍源一郎でした。
明らかに鶴田のほうが上。気がつくと、ｶﾞﾑｼｬﾗに、そして不恰好だけど一生懸命ﾌｧｲﾄしている天龍さんにﾃﾚﾋﾞ越しに感情移入していた事は今もﾊｯｷﾘ覚えています。

しかし元テキ屋さんのようにﾌﾟﾛﾚｽに感心のなかった人を一瞬で興味を持たせる天龍さんはやはりさすがです。
僕も毎晩楽しみにしてもらってるなら、できるだけ毎日、ﾈﾀが尽きるまで頑張ります。(WAR時代ぐらいまでは大丈夫です)

>>353
まだしばらくかかりますけどｱﾒﾌﾟﾛのｽﾚやろうと思ってます。
膨大な資料をお持ちのHBKには是非とも協力をお願いします。
ﾙﾁｬやﾖｰﾛｯﾊﾟも詳しかったですかね？


[元おっかけ]

>>350続き
ﾌﾛﾘﾀﾞ･ﾀﾝﾊﾟのﾄｯﾌﾟﾋｰﾙは高千穂とﾏｻ斎藤だった。
着いて２日目に高千穂の案内でｱﾘｰﾅを見学する事になった。
ここで天龍は初めてﾌﾟﾛﾚｽ会場の熱気を感じる事になる。
ﾀﾝﾊﾟでは5〜6千人しか入らない会場でも超満員。
ﾛｯｸ会場のような熱気でﾌｧﾝがﾜｰﾜｰ騒いで盛り上がっている。
ﾋｰﾙの斎藤が地元ﾚｽﾗｰをちょっとでも攻撃するとﾎﾟｯﾌﾟｺｰﾝが投げつけられたりして、とにかく熱い。

それまでｻﾝﾌﾗﾝｼｽｺのしらけた会場でやっていた天龍は驚いて｢あっ、これがﾌﾟﾛﾚｽ会場なんだな｣と目から鱗が落ちた。
斎藤たちも試合が上手いから会場のﾌｧﾝを自在に操る。
天龍は衝撃を受けながらも｢ﾌﾟﾛﾚｽって楽しいなぁ｣
｢ﾚｽﾗｰって面白い職業だな｣という感情が初めて芽生えた。
それまでの天龍の考えは技をｶｯｺ良く見せようという思いはあったけど、面白がらせるという考え方はなかった。
高千穂と斎藤の試合を見ながらﾌﾟﾛﾚｽはお客さんを面白がらせなければﾀﾞﾒだ。改めてﾌﾟﾛﾚｽというものに惹きつけられていった。

後日、高千穂が興行に関わっていたﾃﾞｭｰｸｹﾑｵｶに天龍を紹介。｢馬場さんとこのﾎﾞｰｲならば｣という事で週に2〜3日、ﾎﾟﾂﾎﾟﾂ試合が入るようになった。
ちょうどこの頃、西鉄ﾗｲｵﾝｽﾞが西武に身売りしてﾌﾛﾘﾀﾞｷｬﾝﾌﾟに来ていた。
東ｽﾎﾟの記者の紹介で阪神から移籍した田淵、古沢と会った。
｢今度の木曜日にﾀﾝﾊﾟで試合があるから来て下さい｣
天龍の誘いに田淵と古沢は本当に観戦に来た。
ﾀﾝﾊﾟのﾌﾟﾛﾚｽを初めて観た二人は
｢凄いね、天龍さん！日本じゃ考えられない熱気！ﾌｧﾝが熱い！野球の比じゃないね！｣と大喜び。

試合後ﾚｽﾗｰが集まるﾊﾞｰへ案内するとﾚｽﾗｰ目当てのｵﾈｴちゃんがいっぱい来るからびっくりしていた。
田淵は体が大きいからﾚｽﾗｰと間違われ喜んでいた。
この頃のｱﾒﾘｶでは本当にﾚｽﾗｰがﾓﾃた。
隠語で｢ｱﾘｰﾅﾗｯﾂ(会場にいるﾈｽﾞﾐ)｣と呼ばれる女の子たちが、どこの会場にもたくさんいてﾚｽﾗｰと接したがっていた。
ｲﾀﾘｱﾝﾚｽﾄﾗﾝに食事に連れて行くとｼｪﾌたちが
｢なんで日本人がｱﾒﾘｶの女の子とあんな楽しそうにやってるんだ？｣と不思議そうにしていた。逆にｱﾒﾘｶのﾚｽﾗｰたちからは
｢日本人は変わってるな。あんな女たちにﾒｼ食わせてﾊﾞｶじゃねーか｣
と呆れられもした。

特に心配したﾘｯｸﾌﾚｱｰからは
｢ﾃﾝﾙｰ､そんなのとばかりつき合わないで、もっとちゃんとしたﾚﾃﾞｨとつき合え｣と注意されている。
だがﾌﾚｱｰの心配をよそに当の天龍は親切でﾌﾚﾝﾄﾞﾘｰな彼女たちに心癒されていた。
契約を手伝ってもらったり、税金の納め方を教えてもらったり、試合会場や次の試合の街探しにも困らない。
この頃、天龍は本気でｱﾘｰﾅﾗｯﾂのｵﾈｴちゃんと一緒になってもいいかなと考えていた。
もう日本に帰らなくてもいいかな。
こういう姿勢が態度にも現れ出した頃、天龍は高千穂に話をきり出した。

｢こっちで気楽にやっていこうと思っているんですよ｣
この時、高千穂はｼﾞﾛﾘと天龍を睨みつけた。
それは意外なほど厳しい視線だった。
｢日本に帰れば何人かは天龍という名前を知っているよ。でもｱﾒﾘｶじゃ誰も知らないよ。そっちは帰ろうと思えば帰れるけど、俺は帰る場所がないんだ。帰れる場所があるだけいいじゃないか…｣
高千穂の言いたい事は痛いほどわかった。
そして、その厳しい生き様にｼｮｯｸも受けた。
この頃、高千穂は全日本ﾌﾟﾛﾚｽのｺｰﾁ役になる事を嫌い、あくまでも第一線のﾚｽﾗｰであり続けようとして30歳を過ぎて、生まれたばかりの長男を連れてｱﾒﾘｶに渡ってきた人なのだ。
天龍は自分の甘えた気持ちが恥ずかしかった。

>>354元おっかけさんっ
膨大な資料(週刊ｺﾞﾝｸﾞ中一から廃刊まで）は実家にぁりゅんですょ…
でもぽっくんほどのﾌﾟﾛﾚｽ者になればほぼ知識ゎ頭に入ってﾏｽｶﾗｽ…

気兼ねなく軽くｽﾚ立ててくださいょ
期待してﾏｽｶﾗｽ…

>>361
了解(^^ゞ
ﾘｯｷｰさんと相談してまた立てます。
以前はNWAとかﾘｯｸﾌﾚｱｰのくくりだったですけど、完ｽﾚを目指すとくくりは幅広いほうがいいですね。
UWAとかCWAとかはあまり情報持ってないので頼りにしてます。


[元おっかけ]

>>360続き
ﾌﾛﾘﾀﾞではﾏｻ斎藤からも影響を受けた。
だいたい突然、部屋に連絡が来て
ﾏｻ｢関取、何してんの？｣
天龍｢何もしてないですよ｣
ﾏｻ｢ジムに行こう｣
天龍｢出発まで30分しかないじゃないですか｣
ﾏｻ｢30分あれば充分できるよ｣
当時の天龍はジムというのは１〜２時間たっぷりやらなきゃ練習にならない。
しっかりとやれなきゃジムに行く意味がないという考えだった。
ところが斎藤はｻｯと行ってﾍﾞﾝﾁﾌﾟﾚｽとかをやって｢はい、終わり｣と帰ってくる。

それを見て、本当に30分あれば30分なりの練習があるんだなと、新しい発見に驚き、それからは30分あれば天龍もジムへ通うようになった。
そうでないと、とてもﾄｯﾌﾟのﾚｽﾗｰとしてやっていけない。
ｱﾒﾘｶのﾚｽﾗｰは売れっ子になると凄く生活が不規則になる。その合間を見て皆、本当に良く練習をしているのだ。
例えば、移動の長いﾉｰｽｶﾛﾗｲﾅのﾃﾘﾄﾘｰは最低でも6〜7時間かかる。
試合が終われば22時〜23時。すぐに帰ってきても夜中の3時。下手すれば4〜5時。

それでも朝の10時にはジムにﾘｯｸﾌﾚｱｰ､ｼﾞﾐｰｽﾇｰｶ､ﾘｯｷｰｽﾃｨﾑﾎﾞｰﾄ､ﾛﾃﾞｨﾊﾟｲﾊﾟｰ等､ﾉｰｽｶﾛﾗｲﾅ地区のﾄｯﾌﾟﾚｽﾗｰが毎日来ている。
それはもう｢凄い、勝てない｣と思わせるくらいの熱心さ、勤勉さである。
ﾛﾃﾞｨﾊﾟｲﾊﾟｰ等のﾄｯﾌﾟﾚｽﾗｰには、ほとんど休みがなく、１年で360日くらい試合が入っている。
その360日全てジムに来て練習し、一度自宅へ戻り会場へ出発の繰り返し。
本当にﾀﾌ｡
ﾏｻ斎藤が当たり前のようにやっているﾄｯﾌﾟﾚｽﾗｰの行動にも衝撃を受けた。

｢天龍さんは外人ﾚｽﾗｰの友達が多いですね｣
よくﾏｽｺﾐが言う事だが、確かに事実で、そのほとんどがこの時期と次の渡米の時に出来た繋がりである。
当時を振り返って天龍は
｢日本人のﾄｯﾌﾟと言われた人の中で５年近くも海外修行に出ていた人はいないだろうし、真面目じゃない日本人ﾚｽﾗｰという事で外人ﾚｽﾗｰに印象が強かったのかなと思う｣
と回想している。

普通、日本からｱﾒﾘｶに行ったﾚｽﾗｰは武者修行に来ているという頭があるから、一生懸命練習するし、私生活も無茶はしない。
ところが天龍の場合は、もう日本に帰る気がなかったから、他の外人ﾚｽﾗｰと同じようにﾊﾞｰに行って騒いだり、女の子と遊んだり、酒飲んで練習に行かなかったりもした。
試合にも行きたくなかったら平気で休むし、相変わらずみんなに｢飲めよ！｣と奢ったりしてﾌｧｲﾄﾏﾈｰを全部使い果たしてしまうような生活をしていた。
高千穂に一喝されるまでは。
だからかどうかは分からないが外人ﾚｽﾗｰに友達が多いのは事実である。
SWSで独立というﾆｭｰｽが出た頃、ほとんどのﾏｽｺﾐが口を揃えて、外人ﾚｽﾗｰ招聘に苦労することはあるまい。逆にどんなﾋﾞｯｸﾞﾈｰﾑが駆けつけるのかを予想し始める始末だった。

高千穂に一喝されたその時から天龍は一生懸命ﾌﾟﾛﾚｽに打ち込むようになった。ﾏｻ斎藤の教えも忠実に守り、時間ができればジムに通う日々を過ごしていた。
そして昭和54年10月、天龍は１年８ヶ月ぶりに日本の土を踏んだ。
しかし、待っていたのはﾏｽｺﾐやﾌｧﾝからの冷たい視線だった。
｢全然良くなってないじゃないか！｣
というのが天龍への評価。
そんな天龍に馬場はそれなりの待遇をしてくれた。
しかし天龍の中には違和感があった。
｢待遇のほうが、俺がやっている事より勝っている事を感じるのが凄く嫌だった｣
そして４ヶ月後の55年2月2日、30歳の誕生日に天龍は４回目のｱﾒﾘｶ修行に自発的に旅立っていった。

大袈裟抜きで当時の状況が目に浮かんでくる

アメリカが第二の故郷ですね
しかしながら練習サボるイメージがわかないです

心なしか
最近は逆水平やる選手減りましたね

>>368続き
落ち着いた先は悪夢のｼﾞｮｰｼﾞｱ｡
ただし今回は桜田(ｹﾝﾄﾞｰﾅｶﾞｻｷ)からｻﾝﾀﾞｰﾊﾞｰﾄﾞを安く買っていたから、車の心配は無用だった。
だが、やはり、すぐに問題が勃発した。
ﾚｽﾗｰ兼ﾌﾞｯｶｰのｵﾚｲｱﾝﾀﾞｰｿﾝと衝突してしまった。
その結果、天龍は２ヶ月間、全く試合を組んでもらえずﾎｻれてしまった。

試合がなければ金が入らない。
１日３食の食事も大変な状況になってしまった。
朝はｿｰｾｰｼﾞかﾊﾞﾅﾅにﾏﾖﾈｰｽﾞを塗ってﾊﾟﾝに挟んだｻﾝﾄﾞｲｯﾁ｡昼は米を炊いて、生卵をかけて食い、夜はｲﾝｽﾀﾝﾄﾗｰﾒﾝ｡
これが２ヶ月続いた。
そんな時、ﾄﾞﾘｰﾌｧﾝｸJrから連絡が入った。
｢ﾉｰｽｶﾛﾗｲﾅに行けば食えるぞ！｣
心配した師匠ﾄﾞﾘｰが見かねて話をつけてくれたのである。
そうは言われても、このときの天龍はﾉｰｽｶﾛﾗｲﾅまで行く金もなかった。
ｼﾞｮｰｼﾞｱからﾉｰｽｶﾛﾗｲﾅまで車で約７時間。そこまで行くｶﾞｿﾘﾝ代がないのだから話にならない。

全日本ﾌﾟﾛﾚｽの事務所に電話しようと思ったが、国際電話をかける金もない…
ｱﾌﾞﾄﾞｰﾗｻﾞﾌﾞｯﾁｬｰに借金しようと何度も電話したが、相手はﾄｯﾌﾟ中のﾄｯﾌﾟﾚｽﾗｰ｡つながるはずもなかった。結局、外人ﾚｽﾗｰの来日手配をやっているﾛｻﾝｾﾞﾙｽの旅行会社の人に金を借りてやっとの思いでﾉｰｽｶﾛﾗｲﾅに行き着いた。

長いｱﾒﾘｶ生活の中で楽しい思い出が残っているのがﾌﾛﾘﾀﾞなら、ﾌﾟﾛﾚｽとはこういうもんだよな。とある程度、覚えることができた土地がﾉｰｽｶﾛﾗｲﾅだった。

ここには良いﾚｽﾗｰがたくさんいたし、外人ﾚｽﾗｰと友情を深めることができた。
ﾘｯｷｰｽﾃｨﾑﾎﾞｰﾄ､ﾏｽｸﾄﾞｽｰﾊﾟｰｽﾀｰ､ﾌﾞﾗｯｸｼﾞｬｯｸﾏﾘｶﾞﾝ｡
それにｼﾞﾐｰｽﾇｰｶにはｻﾝﾌﾗﾝｼｽｺ時代以来の再会。
初めて石川とｽﾇｰｶを見たとき
｢凄いﾚｽﾗｰがいるんですよ！日本に呼んだほうがいいですよ！｣と急いで馬場に報告した事があったが、その頃より更に素晴らしくなっていた。

そして何より素晴らしいなと思ったのがﾘｯｸﾌﾚｱｰ｡
最初はｷｻﾞな野郎だと思っていたが、彼ほどﾌﾟﾛに徹した男はいなかった。
自分を売り出すために、自前でｺﾞｰｼﾞｬｽなｶﾞｳﾝを作ったり、毎日、黙々とｼﾞﾑで練習して体を大切にしていたし、試合中に鼻を折られても文句も言わずに次の日からもﾌｧｲﾄしていた。
性格も親分肌で、日本人ﾚｽﾗｰの天龍が何かと不自由しているんじゃないかと気にかけて食事やﾎﾃﾙ等の面倒もみてくれたし、天龍と同じようにﾌｧｲﾄﾏﾈｰをﾊﾟｯと使って遊んでしまう豪快さもあった。

このﾉｰｽｶﾛﾗｲﾅでは良いﾚｽﾗｰに囲まれ、試合の組み立てを重視して学んだ。
技的には、よく新日本に行っていたﾏｽｸﾄﾞｽｰﾊﾟｰｽﾀｰとﾌﾞﾗｯｸｼﾞｬｯｸﾏﾘｶﾞﾝが
｢ｲﾉｷがﾍﾝなｷｯｸ…ﾗｳﾝﾄﾞｷｯｸを使っている｣と教えてくれて、こんな感じかな？と使い始めたのが延髄斬りの原型だ。
調子の良いときに使うと言われるﾄｯﾌﾟﾛｰﾌﾟからのﾀﾞｲﾋﾞﾝｸﾞｴﾙﾎﾞｰﾄﾞﾛｯﾌﾟも、この頃に見たﾌﾗﾝｷｰﾚｲﾝというｶｳﾎﾞｰｲﾚｽﾗｰの一発に惚れ込み、本人にお願いして頂戴してしまった。
ﾚｽﾗｰ仲間とも気が合ったし、ジムに行って練習して、試合して充実した毎日の中で、天龍は遂に念願のﾍﾞﾙﾄを巻く事が出来た。

フレアーと天龍の絆はこの頃からだったとは驚きですハンセンも天龍との３冠トーナメントを自身の心のラストマッチに決めたように、天龍源一郎は外国人トップクラスに人間としても惚れ込まれてますね下手なプロレス本読むより、このスレ読む方が全然楽しいです

>>377続き
1981年、ﾐｽﾀｰﾌｼﾞとのｺﾝﾋﾞでﾐｯﾄﾞｱﾄﾗﾝﾃｨｯｸﾀｯｸﾞ王座を奪取。
相撲を辞めてﾌﾟﾛﾚｽに入って四年半。
初めて手にした勲章だ。
｢これで食いっぱぐれない。とりあえず上の方で使ってもらえる。｣
それが実感だった。

１週間ﾋﾞｼｯと試合が入るようになり、ﾀｲﾄﾙも取れたから毎日、朝昼はﾃﾞﾆｰｽﾞで外食。
ﾁｬﾝﾋﾟｵﾝになって一番嬉しかったのは、週に1000〜1500ﾄﾞﾙ稼げた事だ。
ﾎﾃﾙに泊まっても何の心配もないし、外食しても金が残るというのが嬉しかった。
何とも現実的な喜び方ではあるが、これは海外で食うﾚｽﾗｰの本音だ。

よく日本のﾚｽﾗｰは自分の理想ばかりを揚げ、ｱﾒﾘｶのﾌﾟﾛﾚｽを馬鹿にするが、そういう奴らは実際にｱﾒﾘｶでﾌﾟﾛﾚｽﾗｰとして食ってみるべきだ。と天龍は語っている。
何百ﾏｲﾙも車を運転して毎日会場に向かい、その間にﾄﾚｰﾆﾝｸﾞをして食事してｺﾝﾃﾞｨｼｮﾝを維持し、試合をするﾊｰﾄﾞさは経験した者にしかわからない。

ｱﾒﾘｶで英語が出来ないと絶対ﾄｯﾌﾟに行けない。
ｱﾒﾘｶのﾌﾟﾛﾚｽﾗｰはｲﾝﾀﾋﾞｭｰを受けながら宣伝しなきゃいけない。
｢こいつをぶっ潰してやるから明日はﾁｹｯﾄを買えよ！｣
と自分の試合に客を呼ぶのも自分の仕事なのだ。
理想も大切だが、その前に現実と向き合って闘わなければならない。

海外修行とはよく言ったものだ。これは研修ではない。
修行なのだ。日本に入れば団体からｷﾞｬﾗﾝﾃｨが保証されるが、海外修行には給料は出ない。
文字通り、自分の腕ひとつで生きて行かなければならない。
一つ間違えれば飯も食えなくなる。

天龍はこのﾁｬﾝﾋﾟｵﾝ時代は自分の実力が向上している事を実感しながら、毎日いい試合やれている。という自信も深め、自分の仕事に対する満足感もあった。
ﾉｰｽｶﾛﾗｲﾅはﾗｲﾊﾞﾙが多いのでﾍﾞﾙﾄを取るのは大変だった。
この頃の世界ﾀｯｸﾞﾁｬﾝﾋﾟｵﾝはﾘｯｸﾌﾚｱｰとｸﾞﾚｯｸﾞﾊﾞﾚﾝﾀｲﾝ｡
上手いﾚｽﾗｰが多かったから、彼らの試合を観ているうちに、またひとつﾌﾟﾛﾚｽが分かりかけてきていた。
そんなときに、馬場から日本に戻るように電話がかかってきた。

｢天龍、元気でやってるか？そろそろ日本に帰ってくるか｣
それまで全然連絡がなかった上に、他のﾚｽﾗｰ仲間からの情報で海外修行に出た大仁田たちに、会社から｢天龍はもうﾀﾞﾒだから。これからの世代を担うのはあんたたちだから頑張りなさい｣という手紙が来ていた事を知っていた。
この事にﾍｿを曲げていた天龍は｢もう少しこっちでやりたいんですけど｣と抵抗。
心の内は｢ふざけやがって！俺の事をあれだけﾌﾟﾛﾚｽに誘って、屁をかまして放っておいて、今更何言ってんだ！もういいや、このままｱﾒﾘｶでやってやるよ｣
と本気で思っていた。

ところが、この時の馬場はかなりしつこい。
馬場｢とりあえずいいから帰ってこい｣
天龍｢俺、今帰っても何にもできないですよ｣
馬場｢もう帰ってきてもいいだろ｣
天龍｢何かあったんですか？｣
馬場｢実はﾀｲｶﾞｰ戸口(ｷﾑﾄﾞｸ)が新日本に引き抜かれた。だからとりあえず帰ってこい！｣
馬場は強い口調で言った。天龍はわかりました。と答えるしかなかった。
実はこの頃のﾀｯｸﾞﾊﾟｰﾄﾅｰはｷﾑﾄﾞｸだった。
ｺﾝﾋﾞを組んでいたが、天龍は彼が全日本を辞めて新日本に行く話は全然知らなかった。

一度それらしい話をした事があった。
戸口｢源ちゃん、日本に帰るの？｣
天龍｢俺は帰らないですよ｣
戸口｢じゃあ源ちゃん、俺がもしも、何かやる事になったらﾍﾙﾌﾟしてくれる？｣
天龍｢いいですよ。加勢しますよ｣
戸口｢じゃあ、もしかしたら俺がでかい事をやるかもしれないよ｣
天龍｢そうなんですか｣
そんな話をして、しばらくしたら馬場からの電話。

帰国前に戸口に｢日本に帰るから｣と挨拶しに行ったら｢なんで？｣と驚いている。
あんたのせいでしょうが！と思ったけど知らない事にしていた。

｢日本に帰ってどっかに行くんじゃないの？｣とｶﾏをかけるから
｢それは俺も分からないけど、どっちみちすぐに帰ってくるよ｣
と言葉を濁してその場をやり過ごした。
はっきり言ってこれは馬場の直感、防御策だったに過ぎない。
ﾉｰｽｶﾛﾗｲﾅで天龍とﾀｲｶﾞｰ戸口がﾀｯｸﾞ王者になった情報は、とっくに馬場の耳に入っている。
戸口にそそのかされ、天龍を新日本に連れて行かれる可能性を先に潰す事が目的で、防御は最大の攻撃を経営の持論としている馬場の臭覚での判断だった。

それが証拠に１年３ヶ月ぶりの日本だったが、天龍はあまり大事には扱われなかった。
ｱﾒﾘｶではそれなりの実績を積んだつもりでいたが、日本ではなぜか上手く行かなくて、ﾏｽｺﾐやﾌｧﾝからの評判も悪かった。
また、それだけでなく、ﾚｽﾗｰ間からの評判も良くなく、まだ若手だった渕にまで｢しょっぱい試合をやってしまいましたね。相手が悪かったんですかね。このままじゃ天龍さんも浮かばれないですよね｣
と直接言われる始末…
腹は立つけど本当に日本じゃ浮かばれないし、何の実績がなくても、入る前に雷親父に｢ちゃんと面倒みます｣と約束した手前もあって馬場が渋々上の方で使っているのが見えたのも嫌だった。

居心地の悪い毎日に、これはもう、ｱﾒﾘｶに行くしかないなと、また思い始め、来日していたｴﾘｯｸ兄弟にﾃｷｻｽに行く話をつけてもらった。
ﾀﾞﾗｽを本拠地にする大ﾌﾟﾛﾓｰﾀｰ､鉄の爪ﾌﾘｯﾂﾌｫﾝｴﾘｯｸから、このｼﾘｰｽﾞが終わったらすぐに来るよう連絡があり、それを馬場に話をしたら、何も言わないが一気に不機嫌になってしまった。その顔には｢勝手にしろ！｣と書いてあった。
なぜ？あんなしょっぱい試合しかできないのか？
それはもう苦悩した。今考えるとやはり遠慮があった。
必要以上に上手く見せようとしすぎたり…。
思った事を何でも出せばいいじゃないかって試合が出来てなかった。
それに気付かせてくれたのが、人間風車ﾋﾞﾙﾛﾋﾞﾝｿﾝだった。

名勝負、馬場＆鶴田対ロビンソン＆天龍に繋がるのでしょうか？しかし…〔元おっかけ〕さんは、マニアを超えて、天龍に近い人物なのでは？ここまで知ってるファンって、きっと日本で五指に入りますよプロレス関係者は入れないとして

>>391正解。その試合に繋がります。
僕は天龍さんの試合が住んでる町や近くの地域、近県であるとおっかけて行って観戦していました。試合会場以外で天龍さんを見た事はないです。全然遠いまんまのいちﾌｧﾝです。
一度、飲み屋街で天龍さんが○○という店で飲んでるよって聞いて駆けつけると蝶野さんが飲んでいて、それは恐ろしかった思い出があります(苦笑)
初めて天龍さんのｻｲﾝをいただいたのもﾘﾝｸﾞ解体作業を手伝ったお礼にﾚﾌｪﾘｰの海野さんがもらって来てくれたのを覚えています。


[元おっかけ]

お世辞抜きで、リスペクトですロビンソンとのタッグ編も楽しみにしてますよタイガー戸口の引き抜きの伏線が天龍帰国の伏線とか全然知らなかったです

>>390続き
ｴﾘｯｸから｢ｼﾞｬﾊﾟﾆｰｽﾞﾚｽﾗｰが来るからﾃﾚﾋﾞで盛んにｺﾏｰｼｬﾙをやっているから、早く来てくれ！いつ来るんだ？｣
と催促が入っている状況の中、次のｼﾘｰｽﾞに突入した。
要は馬場と気まずいﾑｰﾄﾞのまま渡米できなかったのだ。
しかし、このｼﾘｰｽﾞで天龍の運命を変える出来事が起こった。
ｼﾘｰｽﾞ最終戦でﾋﾞﾙﾛﾋﾞﾝｿﾝと組んで馬場、鶴田組のｲﾝﾀｰﾀｯｸﾞ王座に挑戦する予定だったﾃﾞｨｯｸｽﾚｰﾀｰが、交通事故の後遺症から原因不明の頭痛に襲われ、富山空港から急遽帰国してしまったのである。

ﾁｬﾚﾝｼﾞｬｰ不在。外人勢の中にはｽﾚｰﾀｰに匹敵する強豪はいない上、ﾛﾋﾞﾝｿﾝまでが挑戦放棄やむなしといった雲行きになってきた。
その話を耳にした天龍は当時、選手会のﾘｰﾀﾞｰ格だったｸﾞﾚｰﾄ小鹿に進言した。
｢最終戦のためだけに一人、外人を呼ぶんじゃ、金もかかりますし、俺はどっちみち、このｼﾘｰｽﾞが終わったらﾃｷｻｽに行きますから俺がやりますよ。天龍&ﾛﾋﾞﾝｿﾝ組でどうですかね？｣
小鹿が馬場に話を持って行くと｢面白いな｣という事になり、ﾃｽﾄﾏｯﾁとして
天龍､ﾛﾋﾞﾝｿﾝvs鶴田､羽田で試合を行った。
この試合は天龍&ﾛﾋﾞﾝｿﾝ組が勝利している。

試合後、ﾛﾋﾞﾝｿﾝから
｢ﾃﾝﾙｰ､ｵｸﾄﾊﾟｽﾎｰﾙﾄﾞ(卍固め)やﾗｳﾝﾄﾞｷｯｸ(延髄斬り)できるんだろ？ﾕｰはｲﾉｷに体格的に似ている。ｲﾉｷの使う技をやってみろよ｣
とびっくりするようなｱﾄﾞﾊﾞｲｽを受けた。
当時の日本ﾏｯﾄ界では他人の技を使用する事はﾀﾌﾞｰであり、延髄斬りのほうならｱﾒﾘｶで使っていたから、まだﾏｼも卍固め使ったとなると問題があると説明した。すると
｢ｵｸﾄﾊﾟｽ?あれは元々ﾖｰﾛｯﾊﾟの技だから関係ない。使い手も多いし、ｲﾉｷを気にしなくていいからどんどんやれ！全部やって、やる事がなくなったら俺にﾀｯﾁすれば、後は俺が全部ﾌｫﾛｰするから｣
と譲らない。

これが終わったらどうせｱﾒﾘｶに戻るんだし、置き土産として好き勝手にやってやるかと思い、｢OK､OK!｣と返事。
卍固めや延髄斬り、天龍がやりたい事をやってﾛﾋﾞﾝｿﾝに繋ぐ練習を何度もした。
この時のﾛﾋﾞﾝｿﾝは既に世界の強豪ﾚｽﾗｰのﾄｯﾌﾟ5に入る実力者であったが、まだ鳴かず飛ばずのｸﾞﾘｰﾝﾎﾞｰｲだった天龍に、かなり熱心に指導してくれた。
自分たちの試合を面白くないと言われるのが凄く嫌だったようで、少なくともﾊｲﾚﾍﾞﾙな試合をやりたい。というのが本音だったようだ。

しかし、あの時、ﾛﾋﾞﾝｿﾝが天龍をﾊﾟｰﾄﾅｰとして了承した理由はいまだに謎のままだという。
天龍が言うには
｢いつものﾛﾋﾞﾝｿﾝなら、天龍？他の奴にしろ！｣
と言うはず。と回想している。
そして、予定通りｼﾘｰｽﾞ最終戦。ｲﾝﾀｰﾀｯｸﾞ選手権。
60分3本勝負
馬場､鶴田vsﾛﾋﾞﾝｿﾝ､天龍
が行われた。

試合はﾛﾋﾞﾝｿﾝに言われた通り、やる事がなくなるまでがむしゃらに行った。
もう無茶苦茶に突っ掛かって行ったからｼﾞｬﾝﾎﾞも怒り、試合はｽﾊﾟｰｸ!
ﾗﾌも使い、手を変え品を変え馬場、鶴田を追い詰める天龍の姿に、観客からも大歓声が飛ぶ。
試合は１-２で敗れてしまったが、天龍がこの試合で掴んだ獲物はﾀｲﾄﾙ以上に大きかった。
ﾃﾞｨｯｸｽﾚｰﾀｰの代役で見事ﾁｬﾝｽを握った。また、自分の居場所を力でﾓﾉにした。
そして、ﾌﾟﾛﾚｽに転向して５年目のこの夏、いよいよ全日本第３の男、風雲昇り龍として始動する事を決定付けた。